BLOG /
社内研修が身につかない理由と、設計のなおし方
研修をやっても現場が変わらないのは、講義の内容ではなく設計の順番に原因があります。ゴール設定から評価までの直し方を手順で解説します。
研修をやっても、現場は変わらない。よくある悩みです。原因は講師や教材の質だと思われがちですが、実は設計の順番にあるケースがほとんどです。研修は本来、ゴールを決め、内容をつくり、最後に評価する。この順番で組み立てるものです。ところが多くの現場は、内容づくりから始めてしまいます。ここでは、インストラクショナルデザイン(ID)の基本にそって、設計の直し方を手順で見ていきます。
研修直後は「わかった気」で終わる、忘却曲線という壁
心理学者エビングハウスが示した忘却曲線は、学んだ内容が時間とともに薄れていく現象です。研修直後のアンケートで満足度が高くても、それは「わかった気になった」だけかもしれません。人は新しい情報を、行動に結びつける前に忘れていく生き物です。しかも研修当日は気分が高まっているぶん、アンケートの数字は実態より良く出やすくなります。効果測定を「その場のアンケート」だけで終わらせると、この忘却の壁を見落とします。翌週には内容のほとんどが現場の記憶から消えている。そんな前提で設計を組み直す必要があります。IDの代表的な枠組みであるADDIEモデルも、分析からゴール設定を経て評価にいたる順序を重視しています。順番を守らないまま教材だけを整えても、効果は積み上がりません。
ゴールを「知る」ではなく「できる」で書き直す
研修設計のスタートは、ゴール設定です。多くの研修は「〇〇について理解する」といった知識目標で終わっています。これでは、受講者が現場で何をすべきかわかりません。ゴールは「知る」ではなく「できる」の形で書くのが基本です。誰が、どんな条件で、どの水準までできればよいか。この三つを言葉にすると、ゴールは一気に具体的になります。たとえば「クレーム対応の流れを理解する」ではなく、「初期対応を台本なしで慌てず完了できる」と書きます。行動と条件を具体的に示すのがポイントです。ゴールが行動レベルまで分解されていれば、講義の内容も評価の方法も、自然と決まってきます。逆にゴールがあいまいなままだと、講師は「念のため」の情報を詰めこみすぎ、受講者は何を持ち帰ればいいのか迷ってしまいます。
講義だけで終わらせない、アウトプットを組みこむ設計
知識を聞くだけの研修は、記憶に残りにくいものです。ロールプレイ、ケーススタディ、ミニテストなど、受講者が手を動かす場面を設計に組みこむことが重要です。講義とアウトプットの割合を逆転させ、講師が話す時間を減らし、受講者が試行錯誤する時間を増やす。失敗を安全に経験できる場を用意すれば、現場で同じ失敗を避けやすくなります。研修の終盤には「明日から何を変えるか」を短く書かせる、行動宣言シートも有効です。書いた内容を上司や同僚と共有すると、記憶が定着しやすくなります。研修中に一度も手を動かさない設計は、見直しの対象と考えてよいでしょう。
研修後30日で見る、定着を測る仕組みのつくり方
研修の効果は、当日ではなく30日後に見るべきものです。行動が現場に定着したかどうかは、時間が経ってから確認しないとわかりません。評価には反応・学習・行動・成果という段階があり、多くの研修は最初の二段階、つまりアンケートとテストで止まっています。研修から一週間後と一ヶ月後の二回、チェックシートやOJTでの観察で振り返る。これがひとつの目安です。ゴールに定めた行動が、現場でできているかを確かめるためです。上司による声かけや、実務での小さな成功体験の共有も、定着を後押しします。評価が「アンケートの満足度」だけで終わっている研修は、この定着確認の工程が抜けている場合がほとんどです。
明日から使える社内研修設計チェックリスト
最後に、設計を見直す視点を四つにまとめます。
- ゴールは「できる」の形で、条件つきで書かれているか
- 講義とアウトプットの時間配分は逆転しているか
- 研修後30日の定着確認の仕組みがあるか
- 評価はアンケート以外の指標を含んでいるか
これらを一つずつ確認していくと、研修の設計は「話す場」から「変わる場」に変わっていきます。教材や講師を変えなくても、設計の順番を直すだけで結果につながる余地は、こうしたチェック項目のいずれかが抜けている研修ほど大きくなります。
研修は、やること自体が目的ではありません。現場が変わるまでが設計の範囲です。KUJIRA studio.では、インストラクショナルデザインにもとづいた研修設計の相談を受け付けています。詳しくはサービス内容をご覧ください。気になる方はお問い合わせからどうぞ。